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いつもと同じに早く起き出し、ガレベーラは牛を一頭ずつ小屋から連れ出して、水を飲ませる。
そのうちに空がぐんぐん白みだし、草がいきいきと風に泳ぎ出す。
「おはよう。調子はどう?」
牛たちも山羊も変わりなく、元気な様子だ。ガレベーラに応えるような優しい声で鳴く。
いつもと変わらない朝だ。
ふいになぜか昔の癖が出てしまった。
指で胸元にある石に触れる仕草を、ガレベーラはかつてよくしていた。
そこを飾っていたペンダントはとうの昔にないが、今朝は久しぶりにそれを探してしまった。
ガレベーラがこの村へ来て、季節が巡るのはもう三度目だ。
予定通りなら、グウィディウスはもう帰国しているはずだった。
朝日が昇る。それを全身に浴びる。
「今日もいい朝だ」
いつもと変わらない朝だった。
そして、いつもと変わらない一日のはずだった。
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