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「大丈夫だよ。行くもんか」
「だったらいいんだ。しかし、ギーがたまにそうやって綺麗に顔を洗ったりすると驚くよ。まるで女みたいだもんな。考え方によっちゃ、綺麗な服着てさ、食べ物もたんとあるだろうし、そっちの方が幸せなのかなって思う。きっとふかふかのベッドだぜ! まあ、動物と同じ扱いをされるって話だけどな」
「食べ物もふかふかのベッドも憧れるけど、僕はここにいたいなって思ってるから」
「そうだな、ギーは弟と妹を迎えに行かなきゃならないもんな。騎士様について行ったらもうそいつらに会えないもんな」
「うん。僕の夢は三人で暮らすことだから。そのためだったら、貧しくても我慢するさ。いつかイオが親方になったら、僕を雇ってよ」
「任せろって。家も俺が用意してやるよ!」
夕陽に照らされたイオの赤毛がさらにオレンジ色に染まる。
イオの夢は、いつか親方のもとを離れて自分で仕事をすること。
ガレベーラは、給金のもらえる仕事に就いて、屋根のある家に三人で住むこと。
貧しい若者たちは、ささやかすぎる夢をしばらく語り合った。
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