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明日、また会ってしまったらどうすればいいのだろう。
例えば、金の無心をすれば、グウィディウスは言い値を、否言い値以上をくれるだろう。
現状を訴えれば、王都に行きたいといえば、何かしら善処してくれるには違いない。
しかし、それを言える身分にガレベーラはもうない。
身分というものがどれほど人間としての力に差を与えるのかは、もう身をもって知っている。
その差が、ガレベーラにはもうつらいのだ。
その差をまざまざと感じることが、耐えがたい。
ここにいることが分かった以上、もはや居場所を変えた方がいいのかもしれない。
今だって、なんとかようやく見つけた所だが、明日には帰ると言ったグウィディウスが再び来ないとも限らない。
加えて、身分のある者がギーを探していたことは、あっという間に村の噂になるだろう。
この先、とてもではないが心穏やかに過ごすことなどできそうになかった。
皆が貧しい見知らぬ土地で、身一つの、ましてや女が新しく暮らしていく困難よりも、ここに居続けるほうが苦痛になりかねない。
悶々と考えていると、草の音に混じって、かたん、と戸が鳴った。
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