4.牛飼い姫

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「ギー!」  厳粛な神の前に、勢いよく音を立てて扉が開いた。  そこにいたのは、グウィディウスだった。  ひどく険しい顔で、入口に立ちはだかっている。  外は夜明けが近い時刻らしく、すでに白んでいた。  グウィディウスの髪は乱れて、肩でする息が白い。 「グウィディウス、様!?」  驚きのあまり、ガレベーラはその場で立ち上がった。  毛布がばさりと足元に落ちる。  横になっていたイオが目覚めたらしく、上体を起こす。  寝ぼけまなこで左右をきょろきょろとしてから、 「……んあぁ、ギー……どうした……? あ、騎士様?」 「ああ、お越しになられましたか。お待ちしておりました。神よ、祝福に感謝いたします」  神父もやってきて、恭しい礼とともに祈りを捧げた。 「ギー、悪いがついて来てもらう」 「……え?」  つかつかと教会内に入ってきたかと思うと、ガレベーラの手を取り、引っ張っていこうとする。 「お、お待ちください……! 牛の世話が……」 「イオ、悪いが頼めるかな」 「は、はい! わかりました! ま、ま、まかせてください! ギー、牛たちは任せとけ!」 「え、どうして!? なぜ……!」 「ギー」  神父の優しい声がする。 「初めて見た時、あなたはぼろぼろになって倒れていました。もちろん、それが何びとであれ私は助けていたでしょう。しかし、これは神のお導きだと思いました。神が、私をこの方のもとへ遣い賜ったのだとすぐにわかりました。あなたは光に包まれていたのです」 「そんなわけが……」  ガレベーラは何度も首を振った。
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