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「やあ、ガレベーラ。孤児の恋人でもできたのかい?」
王城で開かれた夜会で、ガレベーラに声をかけてきたのは王太子であるアルディウスだった。
「もしそうならグウィディウスに報告しないといけないからね。ガレベーラ嬢はしょっちゅう孤児院を尋ねているって。私は、あいつが不在の間の見張り役を仰せつかっているんだから」
「恐れ多くも、殿下のお手を煩わせるようなことは一切ございませんのでご心配なさいませんよう」
母が王女であったガレベーラはその縁で、幼少の頃から城に上がる機会を与えられていた。
ガレベーラより二つ年上の王太子アルディウスと、その異母弟のグウィディウスとは共に学び、育ってきた仲だ。
ガレベーラと同じく、グウィディウスも側妃だった生母とは死別している。
しかし、グウィディウスやガレベーラまでもが、アルディウスとともに現王妃を母のように慕うことを許され、『母の愛情』というものがどのようなものなのかを教えてくれたのは王妃だった。
「将来、慈善事業家にでもなるつもりかい?」
腕組みをしたアルディウスが、ガレベーラを窺ってくる。
「……親もなく、さらに貧しくとあっては可哀そうで不憫な子どもたちです。わたくしにできることをやろうと思っているだけですわ。幸い、わたくしには今、時間がたっぷりとございますから」
「グウィディウスものんきな奴だ。ガレベーラを放って外国なんか行くなんてね」
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