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西都はリビから一番近い街になる。
ガレベーラは、カシアから話を聞いたことならごまんとあったが、やってきたのは初めてだった。
王都には遠く及ばないまでも、十分に大きな街だった。
着いたとき、朝日は昇り、広場にはすでに朝のにぎわいが存在していた。
たくさんの物売りが出ている。
ここまでは馬から落ちないことに必死だったガレベーラだが、ようやく周りを窺う余裕が出てきた。
案内された宿は、リビの宿屋よりは数段格式が上だが、グウィディウスの身分にはとうてい似合わない中程度くらいのところと思われた。
しかし、中は以外にも落ち着いた雰囲気で静かだ。
宿の主人らしき男が、「おかえりなさまいませ」と恭しく頭を下げたくらいで、廊下で誰にすれ違うこともない。
部屋は、一番上の三階だった。
むき出しの板張りの床に、華美でも豪華でもない簡素な設えで、それでも、久しく見たことのないまぶしいほどの清潔感に、ガレベーラはいたたまれなくなる。
入るのをためらったのが、グウィディウスにはわかったらしい。
「僕らは少し仕事の打ち合わせをするから、ここで少し待っていてくれるかな。それと、ギーの自由にすればいいのだけれど、宿の人に言えば風呂を貸してもらえるから」
ガレベーラはその言葉に、とっさに顔を赤くして下を向いた。
「ああ、すまない。君の名誉のために言うけれど、今のギーが決して悪いわけじゃない。僕らだって、ひとたび任務に出れば似たようなものさ。川で水を浴びるし、服だって着たきり、髭だってのびっぱなしだからね」
従者──名をペスロと言った――に同意を求めるように言えば、ペスロも、
「ひどい時なんて、おそらくギー様のご想像を超える悲惨さですよ」とおどけた表情をした。
「ただ、君と落ち着いて話がしたいから、君がなにか余計なことで気を揉むくらいならと思っての、おせっかいな提案だ。気にしないで」
ガレベーラが返事をする前に、
「まあ、ひとまず、宿の者を部屋に寄こすから、用事があれば言うといい」
そう言って、居心地の悪い思いで立ち尽くしたままのガレベーラを部屋に残して出て行った。
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