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トーロ夫人は今も昔も、少なくとも容姿に変わりないように思われた。
たいていの女性は老いを気にしがちだが、派手に着飾る習慣のない人は、淡々として、老いもどこか自然だ。
一通りの形式的な挨拶を終えると、トーロ夫人が、静かに紅茶を飲みながら言った。
「ガレベーラ様の捜索をなさっているとか」
用件とはおそらくガレべーラのことだろうとは思っていたので、驚きはなかった。
期待に胸が高鳴る。
「……彼女は出奔したことになっておりますので、カトル家の目もあり、大っぴらに探すことはできませんが……幼馴染の姫ですので行方を心配しております」
「さようでございますか」
トーロ夫人は、しっかり頷き、
「では、おそらく、殿下のお目汚しとはなりませんわね、あの子たちを御覧になっても」
その言葉を合図に、メイドが連れてきたのは男女の子どもだった。
少年と少女は兄妹のように見える。
「この子たちは浮浪児です。家はございません。道で暮らしています」
「浮浪児……にしては」
「小ぎれいな格好をしておりますでしょう?」
「……ええ、まぁ」
小ぎれいといっても、浮浪児には見えないというだけで、普通の貴族なら同室するのさえ嫌悪をあらわにするだろう。
それでも彼らの顔は、ほとんどがそうであるのに対して、汚れてはいなかったし、襟のあるシャツとズボン、少女はワンピースさえ着ていた。
おおよそ、古着の古着の、さらに着古しといったところだろう。色は褪せているが、破れてはいない。二人とも靴もはいている。
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