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「二人とも、こちらへいらっしゃい」
そんな二人をてらいもなく傍に呼んだトーロ夫人に意外さを覚えた。
いつまでも過去の栄光や古い価値観にとらわれている筆頭で、階級差の序列を声高に叫んでいそうなのに、と心の内で思う。
「この子たちが手紙を書いて、わたくし宛てに持って参りましたの」
「手紙、ですか? 字が書けると言うのですか? この子たちはいったい……、どちらかの没落した家の子たちですか?」
「いいえ。違います」
トーロ夫人は首を横に振り、特徴ともえいる厳しい顔つきを、あろうことか緩ませた。
「彼らの手紙には『グウィディウス様に会って話したいことがある』とございまして。この子たちがお傍に寄っても構いませんこと? ペルラ、殿下にお見せしなさい」
少女がこくりと頷く。
おずおずとグウィディウスのところまで来て、握っていた手のひらをそっと開いて見せた。
「これは……!」
「見覚えがおありですか」
グウィディウスはペルラに跪き、小さな手にそっと触れる。
ガレベーラに贈ったペンダントは、グウィディウスの瞳と同じ色の石で、不在の間、代わりに彼女の傍に置いてほしいと願ったものだ。
「ペルラ、と言ったね……。彼女が、兄妹と共にいたと聞いたのは君たちのことだったんだね」
グウィディウスは自分の声が震えているのがわかった。
「この子たちのことは以前から知っていました。たまにわたくしの屋敷に顔を見せるので、その時には食べ物などを分け与えていました。ある時から、お礼に手紙をくれるようになりましたの。破れた紙の切れ端に感謝の言葉とわたくしをいたわる言葉が書かれており、たいそう驚きました。浮浪児なのに何故、と」
「まさか、ガレベーラが……」
ペルラがこくりと頷く。
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