5.領主

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「グウィディウス!? どういうこと!?」 「さすがに平民とはいえないけれど、今は、少し土地をもらって、まあ、いわば領主だ。そこに屋敷を立てて、ラナンとペルラと暮らしている。二人は僕の養子にした」 「ラナンとペルラを……!? そんな! そこまで頼ろうと思っていなかったわ! そんな、厚顔なこと……」  ガレベーラは青ざめる。 「もし叶うならば、どなたか親切な方のお屋敷で雇ってもらえたらくらいに思っていたのよ……」 「ガレが二人といたのはそう長い間のことではないのに、彼らは貴族のマナーをよく知っている」 「だって、時間だけはあったから……。知っていれば、いつか仕事に就けるんじゃないかと思ったの」 「教えられたこと以外にも、ガレベーラがいなくなっても彼らは学びを続けたんだ。字も計算も」 「とても賢い子たちよ。けれど……」 「母親は娼婦だったと聞いたけれど、特にラナンは佇まいに品があるね。貴族の落胤なのかもしれない。剣術より学問の方が好きなんだってさ。僕に似てる。跡継ぎには十分すぎるくらいだ」 「……跡継ぎ?」 「今のところ、僕には子どもがいないし、これからも予定はない。なにせ、僕は独身だからね」 「独身、なの……まだ?」 「ああ。それはガレベーラのせいともいえるね」 「そうなのね……。やはり、わたくしとの過去があなたに傷を……。当時、それだけはならないように行動したつもりだったのに」 「ありがとう。僕の名誉一番に考えてくれて」  ガレベーラは涙を零しながら、必死に首を横に振る。  もし、ガレベーラがグウィディウスの名誉などを気にしなければ、王都に一人放り出されたときに、すぐさま誰かに助けを求めていただろう。  しかし、未婚の令嬢の醜聞というものは、ときに死刑宣告よりも残酷だ。  正式な婚約をしていたわけでもなかったのに、それでも枷になったのならば、逆に第二王子の婚約者という肩書があれば、それがガレベーラを守ったかもしれない、とグウィディウスは遅い後悔をした。  グウィディウスは、またガレベーラの許しも得ずに、彼女の身体を自分に引き寄せた。 「グウィ、いけないわ……」  ガレベーラが抵抗を見せたので、抱く手に力を込める。 「……ごめん。君のせいだなんて嘘だ。僕自身のせいだよ。……僕に、けして忘れられない人がいただけだ」  ガレベーラの耳に囁くように言う。  絞り出すように言う。 「ガレベーラを忘れられないだけだ……」
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