第三話  倍返しの法則

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 不意に、下の方に灯りが見えた。  必死で灯りに手を伸ばしたところまでしか覚えていない。  次に目覚めたときには、白人ではないと一目でわかる肌の人間に取り囲まれていた。  「ダイジョウブカ?」  呪い師だろうか、頭に奇妙な冠を被った老婆が覗き込んでいた。  「シュウチョウニ、シラセロ」、側にいた別の老婆に言い付けている。  やがて細長い建物の中に、その酋長なる人物が入って来た。  「イロコイ族の族長の息子など、死んでしまえばよかったんだ」、柱に縄で括りつけられた白人が喚くのが見える。  「ダマレッ」  酋長と呼ばれた男が、問答無用で白人男の喉を掻き切った。  イロコイ族だと?・・デービス検事の魂は慌てて周りを見渡した。  酋長と呼ばれた男が側に跪くと。  「ムスコヨッ」、彼の身体を抱き締めた。  ソコで慌てて自分の手を見る。  褐色の肌だ。ハッキリと白色人種では無いと解る色の手が見える。イロコイ族と言うのは、たしかカナダにいた先住民族だ。  政府軍と激しい戦闘を繰り広げた事で知られる勇猛果敢な部族の名前だ。  「ソコの族長の息子って、マサカ・・俺のことか?」、目眩に襲われる。ソコでマイクが以前に言った言葉が蘇った。  「恒星の魂は、金蚕蠱が何処かの時空に捨てて来たからな。二度と戻ってくることは無いと胡仙が言っていたよ」、確かにマイク・ウッドから聞いた記憶がある。  思い出しても助けにもならない言葉だが、自分の身に何が起こったのかを瞬時に理解するのに十分だった。  絶望が彼を支配する。この先のイロコイ族の運命を、彼は知っているのだ。  デービス検事の魂はあろうことか、先住民族の若者の中に漂着したらしい。  「白人の俺が、褐色のイロコイ族として戦って死ぬのか?」、震えが来た。  過去の世界に閉じ込められ、イロコイ族として生きていくしかないデービス検事の魂が、悲鳴を上げた。  マイク・ウッドの魂が何処に飛んで行ったかも、大よその見当がつく。彼の見当違いでなければ、マイク・ウッドが飛ばされた先も自分と同様、アメリカの先住民族だろう。滅びの運命を背負った先住民族の、誰かの中に着地したはずだ。  どうやったら元に戻れるのか、見当もつかなかった。  そして~☆彡・・それこそが、山神様の恐るべき遊戯。  山神様の大事な遊び相手の銀河に、穢れた振舞いをした酬い。神様には人間の常識など通用しない!  こうして。  やっと恒星がリュウを従え、マイク・ウッドが宿泊しているシャングリラ・トロントホテルのスウィートルームに到着した時には、全てが終わった後だったのである。  【昨夜、裁判所の控室で意識不明のデービス検事と、アメリカ人のマイク・ウッドが倒れているのが発見された。両氏は意識不明の重体で、トロントの病院で治療を受けているが。回復の目途はまだ立っていない】という記事が、翌日の朝刊の下の方に、小さく載っていた。  全ては、デービス検事の意識が戻るまで保留。アメリカン・イーグルもマイク・ウッドの意識が戻るのを待つ事にしかないようだ。  呆気ない幕切れに、Bチームも飯森五郎を回収すると。日本に引き上げて行ったとか。
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