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確かアイツは、あの毒虫が「もうすぐ蛹になって冬眠する」とか、言っていた気がする。
「そのために、処女の血がいる」
「用意して欲しい」と、言っていたような。
「オンナの血なら何ても良いだろう」と、聞いたマイク・ウッドに。
「処女以外のオンナの血を与えると、毒虫がとんでもないモノに変化する」、と言っていたような気もするのだが。
「一つだけ、確認することがある」、蒼くなったマイク・ウッドは、リズが既婚者かどうかをデービス検事に聞いた。
「当たり前だろう、中年の既婚者だよ」
聞えてきた答えを充分に把握するよりも早く。彼の胸元でも何かがモソモソと這いずる気配を感じた。
ハッとして、シャツを脱ぎ捨てる。
彼が最後に見たのは、彼の胸を這う金色の大きな幼虫だった。胸をつたう幼虫の吐く金色の糸が彼の口から入り込んだ。
意識がかすみ、バッタリと倒れた彼の身体を金色の糸が包み込む。まるで大きな蚕の蛹だ。
マイク・ウッドの身体だった物体から、苦しそうな呻き声が聞えてくるが、助けに来るものなど何処にもいない。
やがて金色の蛹から、呻き声が途絶えた。
その十分後。
デービス検事は部屋のドアをノックした。だが、部屋の中にいるはずのマイクから返答がない。
不審に思ったデービス検事が、ホテルのフロントに連絡を入れた。
ホテルマンに鍵を開けさせると、一人で部屋の中に入っていったデービス検事だったが。部屋には誰もいなかった。
「マイク・ウッドがいないぞ」、ホテルマンと一緒にホテル中を捜索したが、見つけることはできなかった。
仕方なく、再び裁判所に戻った。
アイラ判事から、リズ・アリッサムの不審な死に対して、説明を求める出頭命令が出ているのだ。
何気なく控室を覗いたデービス検事が、控室の真ん中に転がる金色の繭を見付けたのは偶然だった。大きさはトランクサイズだが、何が入っているのか分からない不審な物体だ。
銃を抜くと、近寄ってしげしげと観察。
その時だった。
繭がパックリと割れて、金色の幼虫が出てきた。
大きさは公聴会で見た時のままだ。
ホッと安心した次の瞬間だった。
虫が変化した。
大きさが十倍ほどに膨らみ、大量の金色の糸をデービス検事に向かって吐き出した。デービス検事の身体に絡みついた金色の糸が、口の中に入って来て・・意識が飛んだ。
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