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第一話 厳家のお世継ぎ
(ロッキー山脈に挨拶を)
もう直ぐ、ロッキー山脈は厳寒を迎える。
辺り一面が真っ白な雪に閉ざされる季節の訪れだ。
遥か昔から、ロッキーの山々に棲む神々が降臨する。
そんな懐かしいロッキー山脈の屋敷に、恒星に連れられて帰って来たのは、もうすぐ十二月という日のことだった。
セイラの腰に腕を回し、自分のモノだと誇示する恒星。屋敷のスタッフに銀河君のお披露目をする為に、帰って来たのだ。
この後はトロントの本邸に移動。厳家の一族全員を集めて、お披露目会をする予定だ。お義父さんとお義母さんからも、また逢える日を楽しみにしていると連絡をもらっている。
(二人はつい二ヵ月ほど前、ニウエ島まで銀河君を見に来たばかりだが。見事に孫にメロメロ)
さて、その銀河君だが。
専属の世話係として無事に就任を果たしたナニー(乳母と言う言い回しは古臭いと、セイラが勝手に改名)の徐杏里に抱かれて、恒星の後ろから付いてくる。
家政婦のスミス夫人をはじめ、出迎える懐かしい屋敷のスタッフ達の顔が並ぶなか。恒星が生後六か月になる銀河君を紹介した。
まったく侮れぬ我が息子は、蕩ける様な飛び切りのベビースマイルを振りまくと、さっそくスミス夫人から篭絡を開始。
「まぁ、なんて愛らしい若君様なのでございましょう」、セイラがそのスミス夫人の言葉に首を傾げる。(いま若君様・・て言ったのか?謎な言葉だ)
うやうやしく膝を折って、優雅に貴族的な英国風の挨拶をするスミス夫人。
「私にも抱かせて頂けますか」
蜂蜜のような笑顔を浮かべると、銀河君を抱きあげた。コレはそうとう銀河君を甘やかしそうな気配がするお出迎えだ。(とても三人の子持ちのオバサンとは思えぬ態度だぞ)
その時だった。
時代がかった清朝時代の正装に身を固めた年配の中国人男性が、静かに進み出る。いきなり床に臥すと、時代がかった拝礼をした。
「銀河様・・家令の克文でございます」
「厳家の者たちはみな、お世継ぎの誕生を今か今かとお待ち申し上げておりました」
トロントから駆け付けて来たらしい。まさに中国の歴史ドラマに出てきそうな厳しい顔をした厳家の家令(日本的な解釈をするならば、江戸時代の家老に近い)が、目に涙を浮かべて銀河君に忠誠を誓う辺り。
思わずドン引き!
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