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「……王子、大丈夫ですか?」
チエリーは真っ青になっている王子に声をかけた。王子は声を震わせながら返事をする。
「む、無理だよ。早くここから逃げましょう」
その王子の一言でチエリーはハァッと一度息を吐き出すと、さっきまでと目つきが変わった。
「やれやれ」
小声でそう言い残し、王子を置いてチエリーは魔獣に向かってゆっくりと近づく。
「何だ小娘、俺の嫁探しの邪魔をするのか?」
魔獣は嫁探しのために地の世界へ来て、エリザを気に入り魔界に連れて帰ろうとしているようだ。
「魔獣の嫁探しなどどうでもいいわ。それよりもこのわたくしの見合いをぶち壊した罪は高くてよ」
チエリーは迫力ある目力で魔獣を睨みつけたのと同時に素早く空に浮かび、魔獣に向けて手をかざす。
「はぁぁ?何言ってんだ……」
魔獣が何か言おうとしたけど、話を遮りかざした手から青黒く光る連弾を容赦なく放つ。その戦いっぷりはいつもの悪役令嬢に戻っていた。チエリーの勝ち気な笑い声が戦いの場に響く。
その隙に執事はエリザを抱きかかえ、素早く王子の元へ移動した。
「魔界のお嬢様が暴れ終わるまで私の後ろへいて下さい」
執事は右手のひらを左から右に動かして目の前にバリアを作る。王子とエリザは展開についていけずにポカンとしていた。
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