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「ほらよ、お嬢さん。これで満足かい?」
店主はチエリーに向けてバスケットを見せる。
「ふふ、悪くないわ。全く最初から出しなさいよね。まぁいいわ、もうこの世界に用はないしさっさと帰るわよ、執事」
サンドウィッチを見て上機嫌のチエリーは空高く舞い上がり、赤薔薇の花びらを撒き散らしながら姿を消した。俗に言う『瞬間移動』というやつだ。
「令嬢の言葉を通訳しますと『私の為にありがとうございます』と言っております。あとサンドウィッチの代金はこちらに請求をお願いします。では……」
執事は店主にチエリーの住む城の住所が書かれた名刺を渡して、チエリーのように空に浮かびパッと姿を消した。
魔界に戻ったチエリーは赤薔薇に包まれたテラスで、サンドウィッチを食べ始める。執事はサンドウィッチに合わせて黒茶(紅茶のような飲み物)をカップに注ぎ、チエリーの前に差し出す。
「サンドウィッチのお味はいかがですか?」
執事が尋ねると、口元にマヨネーズがついているのに気づかないままチエリーはニッコリして答えた。
「まぁ悪くないわね」
「そうですか。それなら良かったです。でも次に買い物する際には私をお連れ下さいね」
執事もニッコリ微笑んで自分の胸ポケットからハンカチーフを取り出し、チエリーの口元のマヨネーズをそっと拭き取った。
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