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松ヶ浦法子が電話に出ると、声の主は実の父からであった。
法子には育ての親が別にいる。その両親を事故で失った際、父の旧知の友人という人が現れ、実の父・北方甲太郎と名乗ったのだった。彼は、崎玉県の中部から北部にかけて縄張りを持つ北方組の組長であった。
「比寄組のボスが誰か、調べて欲しい」
それが今日の父の用件であった。
父の頼みであれば、仕方ない。嫌でない。ただ、少々面倒なだけだ。
というのも、警察庁の監察課に勤める法子にとって、その程度の情報を集めることは難しいことではない。ただ、その情報を流す相手が問題であったし、警察庁の職員という公の身分だけでなく、その中でも監察課という今の地位も問題でもあった。だからときどきされる、この手の父の頼み事に抵抗を覚えることも確かだった。
(続く)
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