(二)

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 車を停めて店に入るまでの間、法子はそうぼやいていた。  店内に入ると、二人は窓際の畳敷きの座敷席に上がった。  それぞれ注文を済ませると、正義はメニューを置きながら法子に用件を尋ねた。 「比寄組のボスって、誰なの?」  唐突に何を言い出すのか。昔からストレートな物言いをする人間だったが、社会人になってさらに冴えてきたように見える。  それにしても、比寄組の組長が誰なのかは極秘事項だ。というのもそれは正義自身だったからだ。このことは組の人間にも話していない。組長のすぐ下に部下を束ねる番頭がいて、正義がその番頭に直接電話で指示を出すことになっていた。非通知でかけるため、向こうから電話がかかってくることはない。いつも正義が一方的に指示を出すのだ。組の中はもちろん、署内でもそれを知っている人間はいなかった。 (続く)
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