濁った眼

5/5
前へ
/5ページ
次へ
一体何故そんなものを俺が。 よく思い出せ。飲み会のことを。 あの日俺は、会社主催の飲み会に参加したはずだった。 普段から共に仕事をしている同僚と他愛のない話をしながら酒を飲んでいた筈だ。  そこで… 朧げだが思い出してきた。 後輩の女性社員が企画したゲームに参加した。 確かあれは、賞品が出るといって参加した記憶がある。 酒を飲むゲーム… そうだ。飲み比べ対決をした。 俺も相手も浴びるほど酒を飲んで、俺は負けた。 決勝戦を負けたことで、周りを盛り上げるために罰ゲームを提案され、それを受けた気がする。 どこから出したのかわからないが、後輩の女性社員が、面白い酒があるって出してたような。 俺はしぶしぶ罰ゲームとして、面白い酒を飲むことになっていた。 周囲から聞こえる一気飲みのコール。 俺は意を決して酒を一気に飲み干した。 そこで俺の意識は途絶えた。 ここまで思い出して分かったことは、社員の誰かが、俺を殺そうとしていたことだ。 俺を家まで運んでくれた人も誰かはわからない。だが、運んでくれたことで俺は命だけは助かった。 失明してから思う事がある。 それは、 人の本当の心は読めない、真っ暗闇だということだ。 俺は助かった命を噛み締め、これから光の無い新たな世界を生きていく。 この絶望の世界を。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加