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第四章 嘘と真実と
レナスは時折、剣を握る自分が恐ろしくなる。
教主がどんな綺麗な言葉で包んでくれても、彼に宿るのは類まれな人殺しの才能だ。
秘匿とされる暗殺術すら、経典の暗唱よりたやすく身に着けてしまったことに、居たたまれない思いがした。
レナスの胸の奥は、空洞になっていた。
水晶の剣と同化していくうちに、家族を忘れ、生きる意味を忘れてしまいそうだ。しかし今更、道を放棄するわけにいかない。
祖国を愛するには、これ以上の方法を知らなかった。
幼い頃から一緒に育った教主と仲間は、レナスに家族以上の愛情を注いでくれた。彼らの恩に報いるためにも、女神の教えに従い、独り身でも天に祈る一生を終えたい。そう心に決めている。
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