第五章 盗人

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第五章 盗人

 波の音が聞こえる、揺れているのは船の中だからだろう。  動いてはいないようだから、まだイザで停泊しているようだ。  貨物室と思しき、暗く狭い部屋にレナスは手足を鎖で縛られたまま転がされていた。口にはめられた猿轡が鬱陶しい。  予想通り、盗人の首領が動いてくれたようだった。  水晶の剣は腰から外されていて見当たらない。  しかし、守護剣士にとってはもはや人体の一部となっている。  レナスが手足に意識を集中すると、身体から飛び出た水晶の切っ先に、頑丈な鎖は簡単に切断された。  水晶の剣は首領の元にあるはずだ。それにエルガーテの聖衣も。
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