第五章 盗人

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「逃げたぞ、追え」  レナスの逃走に気付き、ランプの灯る狭い通路を、水夫たちが集まってくる。武器を持たぬ者を殺傷するには忍びなく、レナスは当て身で動けぬ程度に倒していく。  船の揺れに足を取られないよう上り階段を駆け抜けると、潮の音と匂いが一気に広がった。  甲板にあったのは、慌てふためいた男の姿だった。  神官フィルだ。足元には、運びこまれたばかりの荷物が残っている。  その中に水晶の剣を見つけた。そして、葡萄酒3本が入る大きさの、青塗りで古びた木箱があった。箱の上部には、大聖堂の紋章が描かれている。  エルガーテの聖衣が入った箱に間違いなかった。
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