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プロローグ
「ウチは小学校の頃からサッカーやってる奴しかいないよ」
入部を考えてますと伝えたら、サッカー部の部長は厳しい言葉を僕へ投げてきた。
それを受け取った僕は考える。考えれば考える程、帰り道の足どりも重くなる。
「大丈夫だ、一也」
臆しやすい僕に向かって、お父さんはいつも優しい言葉で励ましてくれた。
大人になったら、お父さんみたいな人になりたいと本気でそう思っていた。
お父さんはスポーツも勉強も出来る、万能タイプ。学生時代はスポーツも一種目だけでなく、野球、サッカー、テニス、バスケットと色々やったらしいし、未だにスタイルも良いし、20歳くらいの若い頃はスタイルの良さを活かしてモデルの仕事も少し経験したらしい。あとお母さん曰く、若い頃のお父さんはモテたという。
でも現実、僕は真逆だ。
僕は元々運動が苦手で、この運動音痴を改善したいと思った。この春、入学した高校でも野球部やテニス部、サッカー部と説明会や見学会に参加した。運動部ではなく、文化部も考えたが僕がやりたい好きな部活は無かった。
勉強は出来ない訳ではないが、とびきり成績が良いという訳でもない。恋愛にも疎く、当然浮わついた話も無い。
「一也、お前はお前のやりたいことや、出来ることをやればいい」
本当は、お父さんみたいにスポーツ万能になりたい、もっとカッコ良くなりたい。
心の中ではいつも決めるが、大体は上手く行かない。
「自分らしくいれば良いよ」
この言葉も僕にはどうなんだろう。本当はそういうプレッシャー的な言葉が辛かったのかもと考える。
励まされる優しい言葉のおかげで明るい道を進んでいるはずが、実は目の前は暗闇だった。そこから抜け出そうとするが、もがいても抜け出せない。
そもそも、僕らしさって?
サッカー部の部長も曖昧な僕の姿を見て、『こいつは続かないな』とでも思ったに違いない。
僕は考えて考えて、考えるふりをして結局、入部するのは断念した。
いや、きっと最初から答えは決まっていたんだ。
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