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「なんだ、最初からそう言ってくれればちゃんと付き合ったのに」
「正直に話しても断られそうだと思ったから、『他を当たってくれる?』って」
「んぷっ、ぶははっ、何それ? 僕の真似?」
彼女の話し方に僕の真似をされた気がして、可笑しくなった。
「あ! 笑ったぁ! ちょっと笑わないでよ! これでも反省してるんだから」
「んっ、ごめん、つい可笑しくて」
僕はなんとか笑いを収めた。彼女は少し微笑みを見せた。
「もう……、っで話の続きだけど。加藤君からメッセ貰った時に、やっぱり私このままじゃダメだなと思って、マナミの家がこっちの方だからさっき彼女に正直に話して、仲直りしてきたところなの」
「そうだったんだ。ありがとう、話してくれて」
「ううん……ありがとう、聞いてくれて。そして、本当にごめんね」
「もう、いいよ。ごめんは終わり」
僕の言葉に彼女は目尻に皺を寄せて笑った。
「正直さ、分からなかったんだ。私、なんでこんなに劣等感があるのかなって」
「脇坂さんでも、劣等感あるの?」
「それって偏見だよ? 私は無鉄砲で、周りのことを気にしないと思ってるんでしょ?」
僕は咄嗟に首を横に振る。
「運動だって、マナミは昔から何でも出来てさ、私達仲が良いから何でも見えてきて比べちゃって、そしたら部活とかやる意味あるのかなって思ってやってないんだ」
「そう……なんだ」
「笑っちゃうよね……だから半分、私の見栄で『彼氏出来た論争』になっちゃって」
「笑わないよ、僕も同じだからそういう意味ではさ。脇坂さんが良かったらこれからも付き合うよ、高校の門から駅まで」
「二人の帰宅部、続けてくれるの?」
「うん、続けるよ」
「あのさ、僕も正直に言うと、脇坂さんが誘ってくれた時に最初は『うわ、めんどくさ』って思ったんだ」
「うわっ、ストレートに酷っ!」
「でも思えば部活をやる、やらないとか、自分の見栄、プライドばっかり見てて、全く何も見えて無かった」
「それを君が気づかせてくれたんだ! と、そう思うことにしよう」
「なんだ、歯切れの悪いの」
そう言いつつも、ちょっと照れた表情をしている。
「僕と付き合ってよ」
「え? さっき付き合うって話したじゃん、二人帰宅部」
「いや、それじゃなくて……じゃあ、こう言おうか」
僕は彼女の瞳を見て続けた。
「俺の彼女になってよ」
「え、ええ!? ちょっと話が飛躍しすぎだよ」
変な見栄とか、プライドとか、周りを気にしすぎるとか、比べるとか、自分らしくいるとか、そんな暗闇から抜ける方法はいくらでもある。そう思う。
この頃から、今まで人から言われなかったが言われるようになった言葉がある。
カッコ良くなったな、と。
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