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作戦前
この演劇の主人公にしてロミオ王子役の沖田清次(オキタセイジ)は、剣を抜いて青いマントを翻すと、
「ま、魔王バーゲよ、姫は返してもらうぞ!」
緊張した面持ちで切っ先を天に翳した。
次にスポットライトがオレに向く。
静まり返る体育館内。
魔王役のオレは、舞台に設けられた漆黒の椅子からゆっくりと立ち上がる。
棺の中では、姫役の桜真優(サクラマユ)が目を閉じた状態で、王子に抱き抱えられるのを待っていた。
清次に指を指し、
「美しい姫を渡すわけにはいかない!貴様のような腰抜けにだけには、絶対に渡さんぞ!」
アドリブを加えて言い放った。
顔を歪める清次。
「腰抜け・・・」
オレのアドリブがよほど気に入らなかったのか、だが本音だ。
清次は気を取り直して、舞台を続ける。
「魔王バーゲ、我が聖剣を喰らって滅するがいい!」
オレと清次が剣を交える中、
「ゴロゴロゴロゴロ!バリバリバリーーーーーーー!」
雷鳴の演出と効果音が館内に響き渡ると同時に、照明が再び落ちた。
「グアアアアアア」
暗闇の中で、台本通りに唸り声を上げる。
「さあ、魔王の最期だ!」
清次がそう言うと、白い照明が舞台を照らした。
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