うそつきかんなと、うそつきしゅり。

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 大きくてまん丸の目を細めて、甘ったるい言い方。珠李らしからぬ妖艶な大人のような表情。心の奥の奥まで見透かされそう。  ごまかして欲しくなかった。出来るなら、私をどこまで理解しているのかを答えるまで問い詰めたかったけど、そんな事はできるはずがない。もし、問い詰めるときが来るとすれば、それは私と珠李の関係が終わるときだ。  ――底が知れない。  胸の奥から、火照りが広がり熱くなる。これまで珠李に感じたことのない、正体不明の感情。  二人の手の指を絡ませて、どちらともなく顔を近づけ、頬を擦り合う。互いの体温を、感情を共有するように。  自分がしている行動の意味が分からず、おかしくなって噴き出して笑うと、珠李も同じように楽しそうに笑った。  私が珠李を絡め取ったのか、珠李が私を絡め取ったのか、分からなくなった。いや、どっちでもいい。  いっそ、私も珠李も、好きも嫌いも、嘘も本当もグチャグチャに混ざって、一つになればいい。 「これからも、ずっと、ずっと大好きだよ。神奈ちゃん」 「ええ、ええ。私も。珠李」
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