うそつきかんなと、うそつきしゅり。

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 ――ガタンっ。  朝の始業前。突如、教室中に響いた衝撃音で、それまで談笑しあっていたクラスメイトが静まり返る。音源――廊下側後方の私――曽山(そやま)神奈(かんな)の机に視線が集まる。  私の席の横を通ろうとした女子が、私の机にぶつかった。いや、いつもの事だから、わざと蹴った。  いちいち反抗する意味もないので、私は気にしていないように平然と椅子に座ったまま、机を蹴った犯人の女子を見上げる。  彼女は津本(つもと)珠李(しゅり)。クラスメイトの女子。  いつも気怠げで、世の中には楽しいことなんてひとつもないと思い込んでいるような、眉間の皺を寄せた表情で登校してきている。 今は窓から差し込む日光で、顔が陰って見えないけど、いつも通りのつまらなさそうな表情をしているに違いない。  津本さんの明るい金色のショートヘアが、太陽に照らされてキラキラと輝いている。と初の着色はある程度まで校則で許されているとはいえ、ここまで明るい金色に染めている生徒はそうそう居ない。 「何? なんか用?」  津本さんは私の顔を見下ろしながら、他人の机を、しかも本人が座っているのに蹴っておいて、さも自分にやましいことが無いかのようにふんぞり返って、金色の髪をガシガシと雑に掻きながら面倒臭そうに私に悪態をついた。 横目で辺りのクラスメイトの様子を窺う。  私と津本さんの様子を窺うクラスメイトもいれば、今日こそ何が起こるんじゃないかと期待の眼差しを送るクラスメイト、自分に被害が飛び火して面倒事に巻き込まれないようにと素知らぬ顔で顔を逸らすクラスメイトが見えた。  それぞれ違った対応をしているけど、その誰もが「また今日もか」と呆れ混じりの顔をしている。  そう。これは毎日の出来事。  毎日、飽きもせずに津本は私に突っかかってくる。ある日は私の座っている机を蹴り、ある日は廊下で歩いていると肩をぶつけてきたり、ある日は丸めた紙くずを投げてきたり。  中学生にもなって、子供のイタズラみたいだけど、彼女は私をイジメているつもりだ。
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