永遠の日

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 今夜のケンカの原因は、また私の仕事について。  辞めて欲しい、辞めたくない。  どうして辞めないの? ねえ、どうして?!  結婚前に約束していた全てが少しずつ嘘に変わっていく中で、私にとって仕事は最後の(とりで)だった。  自分というものを確立できる最後の場所だった。 「辞めたくない」  真一文字に唇を結んだ私に。 「どうして、僕の言うことを聞いてくれないんだよ! 僕が萌香を養うって言ってるじゃないか!!」  怒鳴り散らし、八つ当たりのように持っていたビール缶を投げつけたのだった。  そうしてから、ようやく冷静さを取り戻すのだ。  それからお約束のように、夫は必ず結婚式の動画を見る。  愛の誓いをもう一度確認して自己嫌悪で泣き崩れ、私を抱きしめて必ずこう言う。 「愛してる、萌香。君がいなきゃ、僕が何もできないのを知っているだろ?」 「ごめんね、君を傷つけてばかりで」 「もう二度としない。許して、萌香」  判を付いたようなお決まりの台詞。  この人は『二度と』という言葉の意味を知っているのだろうか?  知ってて使っているのならば頭の弱い人間か、自分に都合の悪いことは忘れてしまう主義の(たち)の悪い人間のどちらかだ。  夫の場合は後者だと思う。  つい一週間前にも聞いたばかりの『二度としない』は、今年に入ってもう何度目だろうか。
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