永遠の日

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 結婚と同時に夫が購入したタワーマンション。  広いリビングを挟んだ形のお互いの部屋にはウォークインクローゼットと備え付けのデスク。  二人で立ってもまだ余裕のあるキッチンや広々と足を伸ばせる湯船。  傍から見たら幸せを絵に描いたような夫婦生活に見えるかもしれない。  ただし内情は違う。  私が望んでいた新婚生活は、最初から崩れていた。  夫の司とは二年前の合コンで知り合った。  あの頃の私は、彼氏と別れたばかりで本当に荒んでいて、その日の合コンも半ばヤケクソ。  誰かとお酒が飲めればいい、そんな気持ちで参加していた。 「大丈夫?」  一人ベロベロに酔っぱらった私の介抱をしてくれたのが、司だった。  銀縁のメガネオトコ、取り立てて面白味もない大人しい人。  一緒にアウトドアやスポーツを楽しんだ元彼のような明るいキャラではないし、趣味も合いそうもない。  最初は、ちょっと違うかなって敬遠したけれど。 「吐いてもいいよ?」  路地裏でしゃがみ込む私の背中をいつまでもさすってくれる優しい人。  気付けば、好きになっていった。  一流企業に勤めていて性格は穏やかで真面目で、スッキリとした顔立ちのイケメン、細身で背だって高い。  将来結婚するならこんな人がいいなと思い描いていた人、司はまさにそのものだった。  三度目のデートで告白されて付き合いだして、半年後プロポーズを受けた。  それから私たちは未来についてたくさん話あってお互いにプランを考えて納得した。  幸せだった、はずだ。  そのはずだったのに――。
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