永遠の日

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 共働きだから、お互いに家事を分担しよう。  言い出したのは確かに私から、だけど司はその時微笑んでいた。  早く帰ってきた人が、料理を作ろう。  勿論疲れていたらどこかで買ってきたものでもいいし、駅で待ち合わせてご飯を食べてもいい。  洗濯物はお互い、自分のものは自分で洗って、週末には二人で掃除したり買い出しをしよう。  そんな約束は初めからなかったかのように扱われた。  最初の違和感は結婚式の翌日、この部屋で迎えた初めての朝のこと。  朝は和食が好きだと言っていた司のために自分なりに用意をしてみた。  ご飯に味噌汁、卵焼きに鮭、ミニサラダ。 「この味噌汁のお出汁、何かな?」 「だしの素よ? 薄かった?」  少し怪訝な顔でお椀を覗き込んでいた司は。 「薄いというか、違うかな」  そう言うと椀を手にキッチンへと行き、なんの躊躇もなくそれを排水溝へと流し入れる。  頭の中が真っ白になりかけた私の耳に爽やかな司の声。 「煮干しがいいよ、ちゃんと(ハラワタ)を取ったやつね、苦みが出るから」 「え?」 「調べてごらん? 出汁の取り方。ネットにものってるからさ」  優しい微笑みで言い放つ私の夫となった人。 「後ね、卵焼き。甘味がないよ? もしわからなかったら母に聞いてみたらいい、僕の好みの味がわかるよ」  洗濯物の柔軟剤、お風呂の掃除の仕方、洋服の畳み方。  気付けば笑顔で全てにダメ出しをされていた。 「萌香は本当にダメな子だね、もっと頑張らないといけないよ? 僕の奥さん」  二人で交わしたはずの約束はどこに行ったのだろう?  彼をうそつきと呼ぶ勇気すら出ない私は唇を噛みしめるだけだ。
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