永遠の日

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「お、かえりなさい」 「疲れてるんじゃない? ため息、聞こえてた」  聞かれていたのか。というか、いつから後ろにいたの?  心臓がバクバクと嫌な音をたて始める。  そんなに疲れるなら、早く仕事を辞めて家に入ったらどう?  昨日のケンカが再現されそうで首をすくめた。   「ごめんなさい、今日こそは早く帰ろうと思ってたんだけど」 「だよね。だって、結婚記念日だもんね」 「あっ、」  マズイ、と目を反らした私のことを司は見逃してはくれない。 「忘れていたんでしょ?」  メガネの奥で司の目が冷たく光っている。 「そんなことないよ? 後でって思っていたんだけど、ね」  前から用意をしておいたラッピングした細長いプレゼントを鞄の奥底から取り出して渡す。  良かった、これだけは用意しておいて、とホッと胸を撫でおろしながら。 「ありがとう、でも僕にはもう少し暗めの色が似合う気がしない?」  私の手渡した水色のネクタイを失笑しているかのように唇だけをあげて眺めている。 「ごめんなさい、次はそうするわ」  ごめんなさい、次は気を付けるから。  怒らせたら夕べのように、物に八つ当たりをするから謝らなきゃいけない。  世間から見たら品行方正、優しく穏やかな夫。  モラハラで私が苦しんでいることなんか誰も知りやしない。  親にだって言えない。
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