黒い檻

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彼は頭が悪かった。 比喩的な表現もできないほどに。 単純にバカなわけでもない。 只、考える力がないのだ。 そして彼は檻の中に、もう1人の男と一緒に居る。 彼も頭の中がお花畑だった。 彼らは自ら檻から出ようとはしない。 しないのではなくできないのだ。 人は檻に入った時、出るためにできる限りの努力をするだろう。 しかし彼らが努力することはない。 故にこの檻からは決して出られないのだ。 この檻の周りには数えきれない檻がある。 ひとつひとつが、個のコミュニティである。 彼らは檻から遂に出ようとした。 しかし、考える力すら持たない彼らは何も出来なかった。 そして彼らは檻から出るために、ある能力を手にした。 それは、 相手を騙す力である。 相手を騙す力を手に入れた彼らは、いとも容易く檻から出ることが叶った。 だが、彼らは知らなかった。 未だ檻から出ることができていない事実を。
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