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18時50分、神奈川は夕暮れ時に入っていた。
春樹はその夕暮れ時、腹が減ったなと身を起こした、途端、がくんっと大地が縦に大きく揺れた。
「え?」
音を轟かせながら激しく揺れだし、春樹は枕で頭を覆い
「マジかよ!?うわっ!」
と混乱するが、揺れは容赦しない。
ぱき、ぱき、と古いアパートは音をたて、身の危険を感じた春樹はスマホだけを握り締めて、外に飛び出した。
大きな音に振り向くとアパートはがらがらと半壊、一旦地震は緩んだが、また大きく揺れだした。
春樹は身を伏せ、周囲の叫び声や大きな物音の中目を閉じた。
のちに魔のトワイライトタイムと呼ばれた、東京と神奈川東部を中心に襲った大震災である。
「おさまった………?」
春樹は恐る恐る立ち上がり、辺りを見渡した。
まるで戦争でも起こったような、悲惨な光景が広がっている。
コンクリートはひび割れ、建物や壁は部分部分崩れ、赤い車は煙を上げていて、薄暗くなりつつある関東は気味悪く静かだった。
広島の母に電話を試みたが、繋がるはずもない。
そのあとやっと自分が無傷である事に気付いた。
夜が追い討ちを掛けるが如く迫ってきていた。
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