0人が本棚に入れています
本棚に追加
新年を迎えた。さすがに初詣ぐらいは雅成も彼女と一緒に行くだろうと光紀は思ったのだが、雅成は光紀を初詣に誘うのであった。
「お前、本当に彼女いいのか? 彼女より俺に会ってねぇか?」
「いいじゃねぇか、昔からずっと一緒だったんだし。気にするなって」
「お前さぁ……」
「彼女より友達と一緒にいる方が楽しい時期だろ? まぁそりゃあ放置プレイ気味で喧嘩になることもあるけど」
「一ヶ月放置しただけで冷たいって文句言われるギャルゲーもあるのに」
「生身の人間だから大丈夫大丈夫。一ヶ月放置したら文句言うプログラミングされてるだけの女とは違うの」
雅成は神社にて水色と桃色のペアの御守を買った。光紀はなんだかんだで大事に思ってるんじゃないかと、雅成に優しくされる「菜々さん」を羨ましく感じるのであった。
三が日を過ぎたある日、光紀は考えた。雅成のことは誰よりも俺がよく知っている、彼女がいるのに俺と一緒にいてくれるのは、あいつが優しいからだ。付き合いも長い腐れ縁と言うのもあるし、俺を一人にしたくないとでも考えてくれているからだろう。
光紀が幼稚園の時に人見知りが激しく一人ぼっちだったところを話しかけてくれたのは雅成だった。その人見知りの激しさは17歳になった今でも続いているのか、光紀にとって心を許せる友達は雅成ただ一人であった。他に友達を作ろうという気は無いし、いらないと思うほである。一応他に友達はいるにはいるのだが、雅成の友達と知り合ったと言うだけで、光紀にとっては「別にいてもいなくてもいい奴」程度の扱いであった。
雅成も光紀の人見知りの激しさを知っているから「なるべく一緒にいる」ようにし、自分の友達と二人きりにさせるようなことはあまりない。
「俺、あいつにとってほっとけないお荷物程度なんだろうな」
光紀は雅成のことを想い、雅成がこれから彼女と時間を取れるようにしたいと考えるのであった。その手段は身を裂かれるようなものであったが、これで雅成が幸せになれるならいいやと考えるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!