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二人は高校を卒業し、お互いに別の道を往くことになった。光紀は都会の大学、雅成は専門学校へと進んでいく。お互いに親元を出ての一人暮らしとなるために、次にいつ会えるかわからない。
卒業式の終了後、二人はファミレスで軽い卒業パーティーを行うことになった。
「長いようで短かったなぁ、三年間」
「ホントだよ」
「これでお前ともお別れか、せいせいするよ」と、光紀は言うが名残惜しそうな憂いを含んだ顔をしながらコーラを飲み干す。
「そっか、ガキの頃からずっと一緒だったのにこれでお別れか」
雅成は本当にせいせいしたかのように笑顔でオレンジジュースを呷る。
お互いにこれまでの思い出を話していると、唐突にお互いの彼女の話となった。
光紀は焦って「彼女がいる設定」の自分にスイッチを切り替える。
「ほんと、大学受験も彼女のおかげで支えられたよ。一緒に勉強するだけでもだいぶ違うもんだな」と、光紀。実際は自分一人の戦いであった。
「そうか、羨ましいもんだな」
「は? お前だって彼女いるんだから専門学校の試験の支えになってたんじゃないの?」
「あ、そうだ。今日で会うのも最後かもしれないから言っとく。俺、彼女いないんだ」
「え?」
光紀は雅成が何を言っているのかが理解出来なかった。雅成は衝撃の告白をそのまま続けた。
「いやぁな、実は嘘だったんだよ。ごめん、お前に冗談半分でマウント取るつもりで彼女いるって嘘ぶっこいた」
「まじかよ」
「折を見て『うっそぴょーん』ってネタバラシするつもりだったけど、言う機会がなかなか無くてな。嘘に嘘を重ねる羽目になっちまったんだよ」
「じゃあ、菜々ちゃんって」
「俺の好きなアイドルの名前」
「誕生日とかは?」
「誕生日祝ったとかこういった話がある方がリアリティあるだろ?」
「俺と遊んでいる時に彼女さんから電話かかってきたのは?」
「目覚ましだよ。SNS更新してるように見せかけて、適当なタイミングで電話来たかのように鳴らしてた。話ししてたのは全部演技。上手かったでしょ? 俺の人と話すフリ」
「エア彼女かよ…… 何だよそれ…… ペアで御守買ったのも嘘か?」
「ああ、ピンクのお守りは正月遊びに来ていた従姉妹に上げたよ」
「意味わかんねぇよ…… 俺にこんな嘘吐いて平気なお前が信じらんねぇよ。友達に嘘吐いて平気なのかよ」
「でも、人間誰しも嘘吐くもんだろ? 冗談だって言いそびれただけ。彼女のことを詳しく聞かれなかったしな。エア彼女でしょ? って聞かれたら『うん、そうだよ』って肯定して笑い話にしてたよ。怒るなって」
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