第1章 わたくしの記憶

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 あとは、馬車の行者や屋敷の警備、どれもしっくり来ない。  身近なのはメイドだけれど、メイドになる為の仕事なんて、家で教えて貰えるはずもない。  そんなことをしたら、お父様やお母様に怪しまれてしまう。  それなら――。 「どうせ追放されるなら、冒険者にでもなって旅に出るのもありね!」  冒険者なら仲間も作れるし、収入にもなる。  それに、わたくしは護身術を習っているから、剣や弓を学びたいと言っても怪しまれないだろう。  うん、これなら出来そうだ。  記憶の中の物語通りに進めながら、護身術の稽古の時間に剣や弓を学ぶ――。いいかもしれない。  そう思ったわたくしは、すぐにお父様の元に行き、お願いした。 「お父様っ!お仕事中にすみません……わたくしに剣や弓のお稽古をつけてくれませんか?」 「レティ?今なんと……?」  ちなみに、レティというのはレティシアの愛称だ。 「わたくしに剣や弓のお稽古をさせてください」  なぜそんなことを言い出したのか、理解できないという顔だ。  まぁ、貴族の令嬢が学ぶ内容では無いからびっくりするのも分かるけれど……。 「護身術の時間に他のことも学んでみたいのです。それに、何かあった時に役に立つものでしょう?」
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