第3章 甘やかしたい婚約者

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 準備さえしていれば、メイドをひとりくらいはお茶会のために残しておくことは出来たはずだ。  これはわたくしのミスでもある。 「あ、あの」  甘いトーマ様の視線から逃げたくなり、わたくしはなにか話さなくてはと口を開く。 「さっきのドレスの話ですけど、トーマ様はどんな衣装をお召になるのですか?」  いつも王族は白がメインの飾りが沢山着いた衣装だ。  リオの記憶では、白地の貴族がよく着るような王子様の衣装に王族のみの家紋が入っている特注の外套をつけていた。  聞かなくても、パーティーの時はだいたい同じものを着ているからどんなものを着るかは分かっているけれど、咄嗟にでた話題がこれしか無かった。  女性はドレスをアレンジしたり新しいものを新調したりして毎回変化を持たせるけれど、男性は着飾っていれば同じものでも構わないのだ。  きちんとした正装であればなんでもいいことになっている。 「ん〜、内緒」  トーマ様は、自分の口の前に人差し指を持っていき、なにか企んでいるような顔をしていた。  たしかに、リオの記憶ではいつもより豪華にはなっていたけれど、今までと大きな変化は無かったはずだ。  それを内緒にするのはどうしてだろう。
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