第3章 甘やかしたい婚約者

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 もしかして、豪華に着飾った姿を楽しみにしていて欲しいという意味なのだろうか。それとも、サラ様に合わせた衣装だから言い難いとか?  その豪華な飾りの中には、サラ様の色である青緑の色の宝石も着いていた気がする。 「私の衣装は当日までの楽しみに取っておいて」  どうやら、言う気は微塵もないらしい。 「わかりました。楽しみにしておりますわ」  わたくしは気にする素振りを見せず微笑みながら、冷めた紅茶を口に運んだ。  それにしてもあと2日――。  この国では18歳になれば結婚出来る。トーマ様はもう19歳なので、わたくしが18歳になるのを待っている状態だった。  だから、本来ならこの誕生日パーティーは、結婚の報告の場でもあるはずなのだ。  だから去年までは我が家でやっていたパーティーを、わざわざ王宮でやるのだ。  わたくしと、当事者である国王とトーマ様、サラ様以外は、このパーティーが断罪の場になるとは思っても居ないだろう。  結婚ではなく、婚約破棄と国外追放……。  さすがに前日である明日は、わたくしもトーマ様も自由な時間は無いだろうから、きっとこれが最後のお茶会になる。  わたくしの気持ちは、一生胸にしまって生きていくことになるだろう。
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