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もちろん、今日伝えるつもりもない。
少し寂しいけれど、初めからわかっていた結末だ。
わたくしは明後日、この家を出て他国で冒険者として生きていく。貴族のしがらみからも、王太子の婚約者としての重圧からも逃れて――。
1人で生きていけるのか心配だけれど、そのための準備はしっかりしたつもりだ。
マナーは貴族だけでなく、庶民のものも学んできた。護身術も体術だけではなく、短剣も戦えるくらいの強さは手に入れた。お金は、宝石類をこまめに売っていたのである程度の蓄えはある。
この7年間の準備があと少しで……。明後日には国を飛びだして冒険者になることができる。
トーマ様の事が好きだからこそ、ふたりには幸せになって欲しい。
だから、サラ様とのことも陰ながら祝福しようと思う。
不安がないと言えば嘘になるけれど、楽しみでもある未来を考えていたら、自然とわたくしの口元には笑みがこぼれていた。
「ふふっ……レティは明後日がそんなに楽しみなの?」
いつの間にか見られていたらしい。
「……そうですね。楽しみです」
この日が来なければと思ったこともある。
でも、神様でもないわたくしにはどうすることも出来ないのでしょうがない。
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