第1章 わたくしの記憶

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 でも、リオの記憶はとても少ない。  どうしてわたくしに転生したのかも分からない。  記憶の中にあるのは、とある本の事だけ。  その本の題名は分からないけれど、その本のことが大好きなのだとリオが思っている。そのせいなのか、内容はハッキリしていた。  そして、その本の内容と今わたくしが生きている世界が、瓜二つだということも……。  主人公は、サラ・アルテニーという男爵令嬢。青緑色のふわふわの髪は見ていて癒される。同じ色の瞳も見ていて心地が良い。  誰からでも愛されるキャラで天真爛漫で庶民的な彼女は、身分違いの恋をする。  領地で仕事を手伝っていた際、たまたま視察に来ていた王太子と話したことで恋に落ちる。  その王太子、トーマ・ハルディオもまた、懸命に働く彼女の姿を見て惹かれていた。  男爵令嬢と王太子なんて、身分が違いすぎて結婚なんて有り得ないとわたくしは知っている。なのに、それが有り得てしまうのだということもリオの記憶が知っている。  侯爵令嬢であり、トーマの婚約者で国内では王妃様を除くと一番高い地位に居るレティシア。だけど、彼女は悪役令嬢だ。  サラがトーマを好きである事に気づき、トーマもサラに惹かれているということを知ったレティシアは、大好きなトーマを取られたくなくてサラをいじめてしまう。
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