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顔色を隠すのはお手の物だ。にこやかに周りの視線を受け流しながら、ゆっくりとパーティー会場の中央に行く。
今日の主役はわたくし――。
「レティ、固くならずにいつも通りね?」
横にいるトーマ様がいつも通りの、王子様スマイルを保ったままわたくしにしか聞こえない声で囁いてきた。
人の間を抜けると、正面には国王様と王妃様が1段高い位置に座っているのが見える。だけど、その前に今わたくし達がたどり着いたところには、大きな空間が出来ていた。
まさか――。
そのまさか、空間の中央にたどり着いたトーマ様はピタリと止まる。そして、わたくしの腰に手を回し、手を取った。
幼い頃から何度も練習したこのポーズ。
リオの記憶の中の物語では、入場したあとすぐに国王様とトーマ様に挨拶するため、奥まで進んでいた。
そして、挨拶をしたわたくしをその場で断罪したのだ。
だから、挨拶の前にトーマ様とダンスをするなんて思ってもいなかった。
今更このポーズを解くわけにもいかず、トーマ様の背中に手を回し、取られている手をギュッと握った。
そして、距離の近くなったトーマ様を見上げる。
さっきこっそり言われた、いつも通りの意味が分かった。
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