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「あ、申し訳ありません……なんでもないですわ」
背中にまわした手を離し、トーマ様と一緒に一礼をする。
そして、拍手がなり終わった時、トーマ様に手を取られ、エスコートされながら国王様の前に向かった。
この後言われる言葉が頭の中を過ぎって、分かっていても緊張してしまう。
国王様と王妃様のいる祭壇の手前でトーマ様の手を離し、カーテシーをした。トーマ様も横で、ボウ・アンド・スクレープをしている。
「頭をあげよ」
国王様の言葉を聞いて、わたくしとトーマ様は揃って前を向く。
自然な流れだけど、あれ?わたくしは頭をあげることも許されなかったような……?
わたくしとトーマ様を見た国王様は、満足そうな顔をされて、そして会場内全員に届くように声を張り上げた。
「本日、我が息子の婚約者であるレティシア・ウィルド嬢が18歳の誕生日を迎えた。皆、盛大に祝って欲しい。――そして、もうひとつ皆にお知らせがある。2人ともこちらへ……」
やっぱりおかしい。
呼ばれたけれど、この先は王族とその護衛のみが上がることの許される祭壇だ。
わたくしは少し戸惑いながらもトーマ様を見る。
そしてトーマ様もわたくしを見ていた。その顔に戸惑いはなかったけれど……。
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