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トーマ様は先に迷いもなく祭壇の上に上がってから、わたくしの方を振り向いて手を差し出した。
わたくしは……この手を取ってもいいのだろうか。
まさか、目立つところに上がらせてから婚約破棄を言い渡される!?
でも、この祭壇に上がるのは名誉ある事だ。それをわたくしが汚してしまっていいのだろうか。
ここで上がらないのは、国王様の言葉を聞かないと言う意味に捉えられてしまう。
散々迷ったけれど、時間にしてはたぶん数秒――。
わたくしはトーマ様の差し出された手を取って、祭壇の上に1歩踏み出した。
祭壇の上だけれど、国王様と王妃様の手前……そして会場内にいる貴族の方々を見下ろす形になり、ものすごく目立っている。
「レティシア」
そんな中、トーマ様はよく通るボイスでわたくしの名を呼んだ。
――ついに断罪の時が……。
覚悟を決めたわたくしは、国王様と王妃様、会場の皆様に対して横を向く形になることも気にせず、トーマ様を正面から見た。
――これでわたくしは、この国から……。
スゥーッと息を吸う音が聞こえたと思ったら、目の前のトーマ様が私に向かって膝まづいた。
「っ!?」
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