537人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
もともと、断罪されるなら冒険者に――って思ったのだ。婚約破棄されず、国外追放もないなら冒険者になる必要が無い。
大好きなトーマ様の近くに居られるのなら……。
この時のわたくしは、自分が悪役令嬢だということなどすでに頭の中になかった。
「いいえ、トーマ様。不安なんてありませんわ」
そうトーマ様にだけ聞こえるように返事をしたあと、わたくしは少し大きな声を出すため、大きく息を吸った。
「喜んでお受け致します」
その瞬間、ほっとしたようなトーマ様の顔と、嬉しそうな表情の国王様と王妃様が見えた。
わたくしの返事を聞いた会場内もわぁーっと盛り上がっている。貴族たちの中で1番前に居たお父様とお母様も安心したような表情をしている。
これで、よかったんだ……。
リオの記憶の中の物語とは違う結末だったけれど、わたくしはトーマ様と結ばれることが出来る。
どこで物語が変わったのかは分からないけれど、私にとって、ハッピーエンドになったのではないだろうか。
未だに見つめ合っているわたくし達の元に国王様が近づいてきた。そして、わたくしとトーマ様を見てから、会場内向けて言葉をかける。
最初のコメントを投稿しよう!