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「いくら侯爵家でも、許されるはずありませんわね」
わざと聞こえるように言ってくるどこかのご婦人たち。
だれも……わたくしの味方はいらっしゃらないのね。
その事実に落胆したわたくしは、近寄ってきた騎士達に抵抗することも無く捕まる。
「トーマ様、わたくしはずっとお慕いしておりましたわ……」
最後にそう呟いて、促されるがままに会場から退出した。
こうして、主役のはずのわたくしは、愛する人から見放され、断罪されたのだった――。
そう……、このリオの記憶通りだと、わたくしレティシア・ウィルドは悪役令嬢ということになる。
そして18歳の誕生日パーティーで婚約破棄と国外追放。
記憶の中の本の登場人物が、この世界に実在している人と同じ名前なので、たぶんこれは本当に起こってしまうことなのだろう。
侯爵令嬢としての教育を受けてきたわたくしは、全ての貴族の名前を覚えている。その中でも同年代の方ともなれば、どんなに格下の家の方でもだ。
男爵令嬢にサラ・アルテニー様がいらっしゃることも知っている。
それにわたくしの婚約者はトーマ・ハルディオ様だ。
ここまで合っていたら、リオの記憶を信じるしかないだろう。
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