第1章 わたくしの記憶

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 わたくしが断罪されるまであと8年――。  結末が決まった未来なんて、神でもないかぎり、どうすることも出来ない。幸いなのは、死刑ではなかったということだろう。  それならストーリーを変えようと、出来もしない悪あがきをするよりは、国外追放された後どうしたらいいかを考えた方が現実的だ。  正直、トーマ様の事は好きだ。幼い頃からの決められた婚約者としてでは無く、わたくしはきちんと恋をしている。  トーマ様の、長髪で透き通るような金色の髪はいつもは後ろでひとつに束ねられている。  そして、薄い紫の瞳――。見つめられると虜になってしまう、性格だって紳士的な王子様だ。  初めてお会いした時に、わたくしはトーマ様の虜になり、恋をした。  だけど、リオの中のトーマ様への想いは、ラブよりもアイドル的な存在という認識が大きかった。  リオ曰く、“一番の推し”らしい。  それなら、リオの転生先であるわたくしも、トーマ様は“一番の推し”ということになる。  一番の推しで大好きな婚約者のトーマ様だけど、わたくし達は結ばれることの無い運命――。  今生きているこの世界が、本の中の世界ということにもビックリだ。  だけどそれ以上に、初恋が実らずに断罪されるという、変えることの出来ないこの運命を知ってしまった10歳のわたくしは、当時――悲しみに溢れていた。
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