二十一

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二十一

 以下、政子さんたちと例の心霊スポットの廃病院に行ったときのことを記します。日時は、本来ならば三月中に行きたいと希望していたのですが、なかなか全員が都合の合う日がなく、結局四月五日の日曜日になりました。  その間、新型ウイルスに関してどのような動きがあったかということを、簡単に書いておきたいと思います。  三月半ば、有名なスポーツ選手がコロナに感染し、症状として「味やにおいが全くなくなった」ということを言い、それが新型ウイルスの特徴として報道されました。  三月二十二日、とある大規模な格闘技のイベントが、政府の強い自粛要請にも関わらず強行され、日本中から非難を浴びることになりました。  三月二十九日、数日前から新型ウイルス感染が判明し入院が報道されていた、大御所の有名お笑いタレントが死去しました。テレビでは彼の緊急追悼番組が放送されました。  四月一日、総理大臣の緊急記者会見が開かれ、一世帯当たり二枚の布マスクを配布するという意味の分からない発表がされました。これはさすがに誰もがエイプリルフールのネタじゃないかと最初は思ったようですが、どうやら本気だったらしく、後に僕の一人暮らしをするワンルームマンションにも配達されてきました。小学生が給食の時間に着けるような、なんともみじめでちゃっちいマスクでした。  四月四日、東京での新規感染者がとうとう百人を超えたという報道がされました。これがひとつの目安になったのか、テレビや新聞などのメディアは連日、一刻も早く新型インフル特措法に基づく緊急事態宣言を発令し、法的根拠を持って店舗やイベントなどに対して自粛要請をするべきだ、ということを繰り返していました。  そして、いつの間にやら病を抑えるご利益があるという、「アマビエ」と称する妖怪が大流行し、そのかわいいのかグロテスクなのかよくわからない絵柄をあらゆるところで見るようになりました。  テレビ報道では、「自粛の要請など生ぬるいことなど言ってなくて、強制的にロックダウンして、不要不急の外出をするやつは逮捕できるように法改正しろ!」などとコメンテーターなどがさかんに言っています。  また、どんな根拠があるのか不明ですが、政府は二〇二〇年夏に開催予定の東京オリンピックを中止にさせないために、わざと新型ウイルス感染者を少なくして発表している、という陰謀論がささやかれるようにもなりました。
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