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一度、一誠さんを見送りお父様とチャペルの入口に立った私は、今日までの事を思い出していた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 一誠さんと再会したあの日、お父様達には一誠さんと黒川工業で働いていた時、上司と部下だったことから、振り返るように順番に話す私の横で一誠さんはそっと手を繋いでいてくれた。 「それじゃ、お互い好きなのに諦めて離れて、その間に一叶が生まれたと言うのか。」 「はい、私の不甲斐なさが香子にいらない苦労をさせたと後悔しています。」 一誠さんの言葉にお父様が頷く。 「川田じゃないが一発殴らせて欲しいところだな。娘と一叶をしっかりとこれから守るって約束してくれ。」 「お父様、私は守られて幸せにして欲しいわけじゃないの。一誠さんを支えて守って一緒に幸せになりたいの。」 「香子…」 一誠さんが私を見つめたが、お父様が話し始めたのでそちらに向き直った。 「うちとしては、元々あった縁談だしふたりの気持ちも分かったから、後押ししよう。笠松の方は大丈夫か。」 「ちゃんと話をして香子を迎えられるようにするつもりです。それでもだめなら家を出ます。」 一誠さんならどこでも活躍できるだろう。 むしろ笠松のお家が手放したくないはず。 私が考えていた通り、笠松家も最初は私が子持ちなことに難色を示していたが、一叶が一誠さんの子である事と認めないなら家を出ると言ったことで私たちの入籍が決まったのだった。
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