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「あの、お父様。もう一度言ってくださいますか。」
「香子の婚約が決まったと言ったんだ。お相手の笠松かずまくんは、いま海外赴任中だそうだから、式は帰国後になる。」
「婚約?お見合いとかじゃなく?」
朝食の途中だと言うのに、このタイミングでお父様の爆弾発言に食欲も吹っ飛んだ。
「お祖父様とあちらのお祖父様が友人で、ふたりの約束だそうだ。私の代は両方男だったから香子の代で叶えられると喜んでいたよ。」
「あの…私、会った事もない方とってのは、納得いきません。」
「香子、大学卒業したらお見合いする予定だったんだから、何も変わらないだろう。」
お父様は分かってない。
お見合いして、何度かデートを重ねて決めるわけでも、婚約者として時間を過ごすわけでもなく、結婚式に初めて会うなんて…
淡い初恋以来、全く恋とは無縁で来てしまった私だから。
だからこそちゃんと恋して結婚したいのに。
「お父様、横暴です。私、自分でお相手を見つけますから、笠松さん?にはお断りしてください。見つけるまで家には帰りません。」
「待ちなさい。香子!」
私は、お父様を無視して、立ち上がった。
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