箱庭

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ーーー10年後ーーー   「ウジャウジャいるねぇ、バート。 今夜はどっちが多く狩るか勝負しない? もし私が勝ったら、新しい服作ってよ」    オレの隣で嬉しそうにはしゃいでいる女はオレのパートナーで名はアキ。  オレたち吸血鬼一族の外見は、人間で言うなら年齢は20才前後で長身痩躯(ちょうしんそうく)が標準タイプなんだが、アキは珍しく小柄な女の子タイプだ。  まあ不老不死のオレたちに、見た目は大した意味を持たないけどな。  ビルの屋上から見下ろすと、足元にはゾロゾロと人間どもが群れを成して呑気に行き交っている。  忌々しい太陽が地平に沈み、空が闇色に染まった今、オレたちの時間の始まりだ。 「くだらん。が、服は作ってやるよ。 さあ、狩りの時間だ!」    オレとアキは人間の群れ目掛けて、ビルの屋上から飛び降りた。 「赤い瞳!!キ、キビトだ!! み、皆!!逃げるんだー!!」  御伽噺の世界から蘇った闇の住人であるオレたちを、人間どもは【キビト】と呼び恐れた。  変わった名だと思うが、どうやら【鬼の人】が変形してキビトになったってことらしい。 「ギャァアアア! グアアア!!」  ある者は爪に引き裂かれ、ある者は頭を蹴り飛ばされ、逃げ惑う人間どもは断末魔の叫びを上げながら肉塊に成り果てていった。
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