素敵な食材の味わい方

ちっ、この店も今一つだったな。
どこかに、俺をうならせるようなうまい料理を出す店はないもんかね。

やっぱり、食材は産地で決まるんだよな。どこで採れたかもわからん食材はもう博打だよ。もっと調理師は食材の生産地にこだわってもらいたいよ。

「あなた、何だか食材に詳しそうですね」

ん、誰だ、この男。かなり身なりがいいな、はめている時計もかなりのブランドだ。

「今、食材や産地がどうとか言っていましたよね」

俺、さっき声出してたか。いや、それは恥ずかしいな。

「ああ、俺はグルメ雑誌の編集者だからな。有名無名関わらず食材には詳しいよ。普段から良いもの食べているからね」

恥ずかしいついでに大嘘をついてやった。グルメ雑誌の編集者なわけないだろう。俺はただの食好きなサラリーマンだよ。

「これは何たる偶然。私の仲間達での大きな食事会があるんですよ。今回は私が料理当番でね、できればその時に美味しいものを食べさせてあげたくて。良ければ、どの産地のものが美味しいとか教えてくれませんか」