俺の超能力

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 ふああ、と盛大にでるあくびをかみ殺すことなく、俺は吐き出した。眠い。昨日は深夜まで新作のゲームに没頭していたせいで、朝の日差しが暴力的なまでに俺の身体にしんしんと染み渡る。ほぼ完徹に近い俺の身体に、この太陽は少々、刺激が強すぎる。 「おはよ~かんちゃん!」  陽気な声とともに俺の横にやってきたのは、幼馴染みのヒナだ。 「はよ~」 「あっれぇ!? なんか眠そうだねぇ、かんちゃん。もしかして、ゲーム?」  こくりと頷いた。 「ははっ、やっぱり~! じゃあ、今日提出の英語の課題はやってないと見た!」 「残念~。やってます」 「え! マジ!?」  俺は自他共に認めるゲーム厨だ。だが、学業は疎かにしない。ゲームを思う存分楽しむために、勉強もしっかり、しかも前倒しでやるというのが俺の信条なのだ。 「じゃあうつさせてよ~! あたし、今日あたるんだよね」 「勝手にどうぞ」  俺は鞄から課題を取り出して、ヒナに渡す。「やった! ありがと~!」とヒナがぱらぱらとページをめくる。その表情を見て、あ――と俺は気付いた。 「お前、今日……」 「ん? 何?」  ヒナが首を傾げる。「あぁいや、なんでもない」と、早口で答える。マズイマズイ。このことを口に出したら、気味悪がられるか、ドン引きされるか、ストーカー疑惑をかけられるに違いない。  俺は心の中でため息をついた。俺には昔から――超能力、というほどでもないが、他の人間にはない、勘、のようなものを持ち合わせている。  ――一応、痛み止め買っておくか。あとカイロも。 「俺、ドラックストア寄るわ」 「え? 大丈夫? 学校間に合う?」 「ん。たぶん、何とかなる」  ここから一番近いドラックストアは、通学路から少し外れたところにある。店に寄って、学校に行く。タイムロスはかなりあるが、走って行けば始業には間に合うだろう。 「じゃああとで」  ヒナと別れて、俺は駆け出した。全く、この超能力は、使い勝手が難しい。女性の生理周期を把握できる能力――なんて。
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